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調査と分析

今日は、『言語』2005年5月号を少しだけ読みました。

特集は「21世紀の生成文法」です。

 

なぜ私が『言語』を持っているのかというと、大学図書館のお持ち帰りコーナーにあったのを引き取ってきたからです。

そのときは『言語』の他の号も数十冊並んでいましたが、とりあえず私の専修に関係ありそうなものを3冊持ち帰りました。

完全に積読です。

 

今日読んだ特集の前半のうち、1つ肝に銘じておきたい記事があったので、備忘録としてここに記しておきます。

正確に言うと、この記事は、卒論関係の調査をする前に読むべきでした。

それは、北川善久先生の「生成文法の言語分析」です。

以下は、その記事の要約(なかば引用)です。

 

1. 統語外・文法外の要因と文法性の判断

 生成文法の枠組みで研究する上で、文の「文法性」(=文法的か否か)を判断することが重要な役割を持っている。

しかし、実際に行われるのは、文の「容認性」(=容認されるか否か)の判断である。

なぜなら、声に出されたり書かれたりされた文には、文法だけでなく、音調や意味解釈などの統語外の要因も関わっているからである。

 

2. 非文法性を示す難しさ

文の「容認性」から「文法性」を抽出することは難しい。

なぜなら、「容認性」と「文法性」は完全には対応しないからである。

たとえば、文法的におかしな文でも、意味が通っていれば「容認可能」と判断されうる。

 

3. 生成文法における理想化の誤解

必ずしも研究者が思ったとおりの判断を被験者がするわけではない。

そのときに用いられる対策が2つある。

 ① 自分(研究者)と同じ判断をする被験者の文法に限って研究を進める。しかし、自分と異なる判断をする被験者の文法についても追加で研究する。

 ② 無視して研究を進める。仮説に反する判断がなされたのは文法以外が要因であり、文法の範囲を超えるので、切り捨てて考える。

②は理想化(=文法以外のノイズを取り除くこと)の誤解から生じた対策であり、用いられるべきではない。

 

記事の中で挙げられた例も紹介します。

次の(1)は、本でよく見かける日本語の間接疑問文の例です。

従来は非文法的とされてきましたが、読み方(音調)によって判断が変わることが観察されています。

具体的には、(うまく言葉にできませんが、)直接疑問文「メアリーはを食べた?」とまったく同じ音調で読むと、容認性が上がります。

 

(1)(?)~??ジョンは[メアリーがを食べたかどうか]知りたがっている

 

音調以外にも注意を払った例(2)では、さらに容認性が上がるように見えます。

 

(2)保健所は[食中毒患者全員がを食べたか(どうか)]確認しようとしている

 

(2)のような例は初めて見ましたが、確かに、普段よく見る例(1)よりだいぶ自然に聞こえます。

どちらも同じ文法現象に関するものなのに、被験者に見せる文によって被験者の判断が異なってしまうというのは、今考えると少し恐ろしいです。

 

私も卒論で英語母語話者の先生にインタビューさせてもらいましたが、私の予想に反する結果がいくつか出ました。

正直、この記事を読んだ後で振り返ってみると、私が適切な対策が取れていたとは言えません。

卒論の最終発表がまだ残っているのですが、ここがつっこまれてしまいそうです。

今は先生に添削をお願いしている段階でもあるので、その返却においても何か言及があるかもしれません。

 

私の卒論のことはさておき、今日は1つ記事をメモしました。

生成文法において重要な「文法性」を「容認性」から抽出するために、文法以外の要素(音調など)をどう扱うのかが問題である、という記事でした。

自分が本当に知りたいことを知るためにどのように調査して、その結果をどのように分析するかというのは、生成文法に限った話ではないと勝手に想像しています。

今後なにか調査をする機会が訪れるとしたら、気をつけたいと思います。

 

 

参考文献

北川善久(2005)「生成文法の分析方法」『言語』34(5): 38-46. 大修館書店.

 

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